京つう

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Posted by 京つう運営事務局  at 
http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/world/newsengw-20110111-01.html
英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週の米メディアはアリゾナ州の銃撃事件で大騒ぎなわけですが、こちらのコラムでは、米『ワシントン・ポスト』が「揺るぎない日米同盟」を「いい話だ」と評したことを取り上げます。そして、ワシントンが地元の同紙社説・論説からはワシントンの空気のようなものが透けてうかがえるだけに、同紙の社説を担当する論説委員長が前原誠司外相について「テレビ映りがよく、いずれ日本の首相になるかもしれない」と書いたことは、覚えておいてもいいかと思います。(gooニュース 加藤祐子)

○ワシントン・ポストが日本を推薦

東京支局長の経験もある『ワシントン・ポスト』のフレッド・ハイアット論説委員長が前原外相の訪米を機に、日米関係がここ2年間でどう変化してきたかを書いています。同紙は民主党政権が発足した当初から鳩山氏辞任に至るまでずっと厳しい論調だっただけに、今の日本と前原氏に対する書き方が興味深いです。

ハイアット氏は10日付で「日本との同盟関係を修復する(Patching up our alliance with Japan)」という見出しの記事を掲載しました(ちなみにこの見出しはネット上では、このコラムの掲載直前まで「日本が提供する安全保障(Japan's offer of security)」となっていました)。

記事は、オバマ政権のアジア観が変化してきたことを解説しています。いわく、政権発足当初は、(1) 中国との関係は期待できる、(2) 朝鮮半島はなんとかしなくてはならない問題だ、(3) 日本は特に問題もないし、いて当然のものとしてあしらえばそれで済む(can take for granted)衰退する同盟国に過ぎない??と、考えていた。けれども政権発足から2年たって「オバマ氏にとってアジアにおける最良の親友はなんと、韓国なのだ。中国は期待外れだ。そして日本は、付け足し的な存在だったものが頭痛の種になったが、今ではまた役に立つ同盟国になれるかもしれないというところまできた」と。

記事を要約すると、「左寄り」な鳩山氏の親中姿勢のせいで一旦「ぐらついた」日米関係の修復に何より役立ったのは、日米両国が同じように中国に幻滅したことだと。いわくオバマ政権は、中国との関わりを拡大し、国際社会の維持について中国にも大きな役割を与えれば中国の責任ある協力を促すことができるだろうと期待していた。中国が日本を追い越して世界第2位の経済大国となったのに伴い、「米中G2」への期待が、ワシントンと東京の長年の友情を隅に追いやってしまうかと思われていた。しかしアメリカがいくら中国に働きかけても、得る成果は少なかった。中国は対イラン政策ではいやいや協力してくれたが、北朝鮮、通貨と貿易、軍同士の交流、人権などをめぐってはアメリカは落胆させられるばかり。加えて中国は、南シナ海で横暴にふるまい、強圧的な重商主義を押し進め、当局公認の反日デモを繰り広げたことで、日本をはじめとするアジア各国の警戒を高めたのだと。

記事は、「中国はあまりに強大で、あまりに不可欠な経済的パートナー」なだけに、クリントン国務長官も前原外相も、中国の「覇権主義」をあからさまに批判しないが、日米外相会談では「浮上しつつある戦略的な環境」に対応するため「防衛態勢は進化し続けなければならない」と合意したことに言及。

よって「日米関係の調子が変化したことは間違いようがない。皮肉なことに、沖縄基地問題の解決ではなく、未解決のまま双方とも特に騒ぎ立てないことが、日米関係の変化を何よりはっきり示している。オバマはもはや最終通告もしないし、基地問題解決の期限を定めたりもしない。日本側では、在任1年足らずの気の毒な鳩山に替わった後任者が、ひとつの問題に同盟全体が縛られてはならないと強調する」とも(敬称略なのは原文ママです)。

記事は、民主党政権は不安定だし、菅政権が1年以上続くのかも分からないし、日本が長期的にどこへ向かうのかも分からないと指摘した上で、「オバマ政権はこの2年間、中国やロシアといった独裁国家が、パートナーとしていかに予測しにくい相手なのかを見てきた。そして民主国家で同盟国の日本が今、前原が先週言ったように『揺るぎない日米同盟』をアジアの『平和と安定の礎石』として提供しているのだ。かなりいい話のように聞こえる」と、いわば「推薦」しています。「日本がこう言ってます。いい話だと思いますよ」と(「いい話だと思います」と訳した原文の最後のくだりは「sounds like a good deal」。「deal」は直訳すれば「取引」です)。

アメリカと東アジアの関係性をワシントンが見定めるにあたっては、「親中派」と「親日派」の綱引きが伝統的に続いています。ここ数年は「親中派」の圧勝だったわけですが、今回のこの記事はいわばその揺り戻しです。そろそろどうですか、また日本と寄りを戻してみませんか? いったんは中国に浮気をしかけてそっぽを向いた日本もほら、反省して、また尽くしてくれると言ってるわけですし、あなたも中国との浮気に懲りたでしょうから??と、こんな書き方をすると、夫婦喧嘩の仲裁をする人みたいで、かなり下世話な話ですが、政府にそうやって働きかけている記事にも思えます。

そしてアメリカにとって信頼できる良いパートナーにまたなりますから、と日本を代弁しているのが、外務大臣たる前原氏なわけですが、『ワシントン・ポスト』のハイアット論説委員長はその前原氏について「テレビ映りがよく(telegenic)、人気のある政治家で、将来の総理大臣となり得る(a possible future prime minister)」と評しています。「9月に外務大臣として就任して以来、異例なほどの正直さで発言を重ねてきた」前原氏について、アメリカ政府当局者が何より注目するのは、「日米同盟を重視し、民主主義や自由貿易についてアメリカと価値観を共有していること」だと説明します。

私見ですが、「アメリカと価値観を共有」し「はっきり正直にものを言う」外国の政治家は、すなわち、アメリカ政界にとって「一緒に仕事しやすい相手」にほかなりません。『ワシントン・ポスト』の論説が前原氏をこう評したことは、面白いと思います。

○論調の変化は日本の功績でなく

それにしても、『ワシントン・ポスト』にこういう論説記事が載ったのは、これまでの論調の推移からすると実に興味深い。以下は余談としての振り返りですが、たとえば2009年8月〜9月に日本で政権交代が実現した後、英米メディアの論調に差があるということをこちらのコラムでご紹介しました。当時書いたように、おおむね冷静だったイギリス各紙に対してアメリカのメディアは「日米関係はどうなる」と当惑気味で、『ワシントン・ポスト』も鳩山氏が当時掲げていたアジア主義というか「アメリカ主導のグローバリズムの時代は終焉」という発想を警戒していました。

当時の『ワシントン・ポスト』は社説で「自民党は緊密な日米関係を支持していた。一方で、民主党を率いておそらく日本の次の総理大臣となる経験不足な政治家、鳩山由紀夫(訳注・同紙記事は敬称略が基本)は、もっとアジア中心の外交政策を提唱している。時にはこれに加えて、アメリカの『市場原理主義』などといったグローバリゼーションの諸問題を攻撃しているほどだ」「核保有した北朝鮮という脅威がある以上、日本政府が米政府と決別しようとしたり、オバマ政権がそれを容認している場合ではない。それには日本の周辺地域は危険すぎると我々は考える」と警告していたのです。

そして普天間基地を巡る紛糾が始まると、同紙は昨年1月に「オバマ政権は日本にきつく当たりすぎたか?」という社説を掲載し、「二大政党制に足を踏み入れた日本は今のところ、あまり見た目がよろしくない。ワシントンの日本ウォッチャーにとっては特にそうだ」と。「オバマ政権は日本国民と同じで、(鳩山政権に)辟易とする思いをはっきり表明している」「苛立つだけの理由があると国防総省は言う」と書き、「exasperation(辟易)」とか「impatience (焦り、いらだち、もどかしさ)」、「irritation (いらだち)」などの、見ているだけでイライラしてくる単語をこれでもかと並べていました。オバマ政権もさることながら、『ワシントン・ポスト』の筆者も相当に日本にイライラしているのだろうなと思えるほど。

その後の4月には、同紙のコラムニストが、当時の鳩山首相を「loopy(変、いかれてる)」と呼んで、日本でも大騒ぎに。しかも鳩山氏を「loopy」と思っているのはコラムニストだけでなく、オバマ政権関係者だったと。まして鳩山氏自身が国会で「ワシントン・ポスト紙が言うように、私は愚かな首相かもしれない」と答弁する始末の騒ぎでした。

4月下旬には同紙のベテラン記者が、先の核保安サミットでオバマ大統領は鳩山首相に「そろそろ時間切れだ」と言い、本当に信頼していいのかと強い口調で問いかけたことを紹介。5月末には、当時のブレイン・ハーデン東京特派員が、「ますます愛されなくなっている」総理大臣の鳩山氏が「驚くべき優柔不断ぶりを露わにしてきた」と批判しています。

6月2日に鳩山氏が辞任表明すると、『ワシントン・ポスト』は社説で、「日本はその政治リーダーがどうであれ、それにも関わらず、なんとかやっていくようだ(中略)しかしその日本水準に照らしても尚、近年の記録は悲惨だ」と書いています。日本は政治がダメな分を「官僚や経済界リーダーや勤勉な市民が補うのが当たり前の」国なのかもしれないが、いくらそれでも、4年で総理大臣が4人も変わるのはさすがに「良いはずがない」と。

しかし日本政治の動きや内容とは無関係に、中国や北朝鮮を中心としたアジア情勢が緊迫化。韓国艦撃沈、中国の東シナ海実弾演習、尖閣諸島沖の中国漁船衝突、中国のレアアース輸出規制、北朝鮮による韓国・延坪(ヨンピョン)島砲撃という、穏やかならぬ動きが相次ぎ、米メディアの論調は変わっていきます。

『ワシントン・ポスト』は「ますます威圧的になる中国に直面するアジア」と題した9月27日付社説で、約40年前のニクソン訪中からこちらアメリカが中国と正常にやりとりすればするほど、中国の繁栄を促進し、国際機関にも参加するよう促せば促すほど、「中国は平和と安定の勢力になるだろう」という目算が、アメリカの対中外交の大前提だったと。だから米中が「G2」のパートナーとなり世界を動かすのではないかと期待されていたと。これは上述した、オバマ政権発足当初の「中国への期待」と同じです。

しかし「ここ数週間のふるまいから中国が依然、全体主義国家なのだと世界は思い出した」、「自分たちの経済力をどうやって政治や軍事に使うかについて、中国は独自の考え方を持っていることも、改めて世界は知った」と。この昨年9月の社説は、「頼りになるのは中国ではなくアメリカだとアジアは再確認した」という論調でしたが、裏を返せば「頼りになるのは中国ではなく日本だとアメリカは再認識した」ということにもなる。それが、今回のハイアット氏の論説記事です。

こうやって眺めると、日米中の三角関係がぐるぐる回り続けている図式が見えてきます。夫と妻と愛人の関係に置き換えて書けばさらに分かり易いでしょうが、あまりに下世話なので、それは頭の中にとどめておきます。とりあえず、アメリカは本当なら元気のいい中国に乗り換えたいのだが、価値観が違いすぎるのでやっぱり無理だと、長年連れ添った日本に戻ってきた。けれども、アメリカが戻って来たのはあくまでも、中国や北朝鮮の振る舞いのせいであって、日本が変質したからでも、日本がより魅力的になったからでもない。単に比較級で、「まだまし」と思われているに過ぎない。その辺を勘違いしたらまたすぐにアメリカは心離れするだろうし、アメリカをつなぎ止めておくための犠牲を一方的に押し付けられている沖縄県民にとっては、まったくたまったものではありません。



確かに、日本人を人質に取るような中国とはやっていけませんね。
問題外です。  


Posted by 山中 いのいち  at 16:52